日々のエッセイ
7.202017
土地の名義人が亡くなっていた
山里に移住する人のために、社宅代わりに古家と土地を買うことにした。あるNPO法人の理事長から登記について相談を受けた。
土地と建物の登記は、むつかしいものじゃない。これまで20筆以上もやってきた。やってあげてもいいですよ。ただ、農地となるとやこしいですよ。ということで、定住促進事業の一環として、やってさしあげることにしたのだった。
ほとんど書類はできた。委任状、登記申請書、登記原因証明情報など。仮登記の解除の書類もつくった。あとは法務局に申請すれば、完了。
……のはずだった。ところが、いろいろと想定外なことがあったのだ。
これこれこういう書類と署名捺印が必要と、遠方にいる売り主にはじめて電話してみて分かった。昨日のことだ。
じつは土地の名義人が、すでに亡くなっていたのだ。そのことは、買い主からぼくに知らされていなかった。それでは振り出しに戻る。
相続登記がなされていないわけだ。死人と契約を結ぶということになってしまう。それは、法律ではありえない。なので、相続のために遺産分割協議書をつくり、相続登記をする。そのあとで、契約を結んで、委任状を揃えて、登記申請ということになる。
この相続登記がややこしい。これだけの書類が必要だ。故人の戸籍謄本(出生から死亡までのすべて)。故人の住民票の除票。相続人全員の印鑑証明書。相続人全員の住民票。不動産の固定資産評価証明書。不動産の全部事項証明書(法務局)。遺産分割協議書(自分たちで作成する)。
しかもだ。仮登記の解除がややこしい。土地の一部が農地なので、農家資格がないと所有権の移転はできない。農家資格を得てから移転するために、故人は仮登記していた。それも抹消してほしいというわけだ。
しかし、仮登記した本人は、亡くなっている。しかもだ、畑の所有者(土地の名義人)も、今年、亡くなっていた。そうして、相続登記はこれまた、されていない。
死人が死人の土地に仮登記をしていて、その仮登記を解除するという、えらくややこしいはなしになる。
これをすすめていくと、えらい煩雑な事務量となる。
どうしたらいいか。三つの案がある。
A)この土地と建物の売買は、まだ完了していないので、ご破算にする。白紙。なかったことにする。
B)登記はしない。登記しなくても、売買契約を結べば、両者納得で問題ない。ただし、いつか転売するとか、子どもに相続するとき、またややこしいことになる。そういうリスクを背負っていると納得していればいい。
C)相続登記をして、きちんと登記する。ただし、時間とカネがかかるよ、と。
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