日々のエッセイ

雨がざあざあ降ってくる

雨がざあざあ降ってくる。「さんぽいくー」とあかりが言う。言い出したらきかない。待ったなしだ。でも、傘をさしての肩車はあぶない。リヤカーの出動だ。

二歳児になったけれども、あいかわらずおかあちゃんにべったり。おかあちゃんも疲れはて、自分の仕事ができない。妻にはNPO法人の事務処理、そして締め切り間近の編集のサポートもある。なので、こうしておとうちゃんが外に連れだすわけだ。

雨合羽を着せて帽子かぶせる。リヤカーに椅子を載せて、さあ出発。ポツポツと雨が落ちてくる、ざあざあ、ばちばちばち。雨粒がぶつかってくる。「ざあー、ざあー」とよろこんでいる。

びちょびちょの草の上も平気で歩く。滑り台まで挑戦していた。なかなかスリルのある非日常感覚かな。「おうちかえる、いやー、いやー」と、なかなか家に帰りたがらない。

夜になっても、また「さんぽいくー」という。雨が止んだので、こんどは肩車散歩になる。あたりはまったくの闇夜。ヘッドランプをつける。歩くたびにライトに照らされた桜の木がゆらゆらピカピカ光る。

マツムシがチンチロリンと鳴いている。「むしー、むしー、おと」。「そうだね。秋の虫。マツムシだね」。川の音が轟々と響く。「かわおとー、かわおとー」「そうだね。川の音。すごいね」。

空を見上げると、群雲が光っている。風で悠然と雲が動きだす。と、煌々と月が輝いてきた。「おつきさま。おつきさま」。「いいね、いいと。お月さま。きれいだね」そんなやりとりだ。

こうした日々は、二度とやってこない至福の体験なんだろうなと思って、おとうちゃんはひとふんばりなのだ。親は子に育てられる、と。

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