日々のエッセイ

都会での子育ては大変とおもう

教育環境としては、山里はいい。自然が豊かで柔らかな変化に富み、ゆったりしている。保育所がほとんどない、あっても遠い。子どもがいない。友だちができないなど、課題はあるけれど。
 
都会での子育ては、たいへんだと思う。とくに近くに両親や親戚、友人が少ないと、サポートが得られない。ちょっと預けられるところがない。お母さんに負担がかかる。
 
都会は、家賃が高い。ちょっとしたアパートでも、7万円も8万円もする。にもかかわらず、安普請だ。問題は、防音。音の問題では、都会暮らしのとき、苦労したことがある。
 
上から下から、両隣から、音が響いてくる。赤ちゃんは夜泣きする。小さい子は、走り回る。隣家に音が響く。注意しても、子どもにきくわけじゃない。
 
お母さんは、ますます緊張し萎縮する。近くに気分転換できる公園でもあればよいが。クルマの通行が激しくて、安全な場所はすくない。待機児童はたくさん。保育所にすんなり預けられるわけでもない。
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かつて東京の国立市に暮らしていた。その町は、おしゃれで便利で自然も豊か、文化人も多い。いい環境だった。
 
住んでいたアパートは家賃が10万円した。その二階に、二人の小学生がいた。ドスンという音が、よく響く。うるさいなと思ったが、我慢していた。
 
あるとき、二階で洗濯機の水が満水になって、こちらの天井から漏れてきたことがあった。秋なのに、風鈴がいつも風に揺れて、うるさすぎることもあった。で、我慢に限界がきた。
 
いよいよ注意しなくちゃと思った。奥さんに口頭で注意し、さらには、旦那に渡してください、と文章にして手渡した(やさしいことばで)。
 
しかしその時、ぼくの波動は、相手を威嚇するようなものがあったんだろう。あとから、おそろしい現実がやってきた。
 
やがて父親がやってきたのだが、「テメー、ぶっ殺してやるぞ」という剣幕だった。大声で怒鳴り散らすという狂気。これは、ちょっと警察沙汰に近いなと思い、警察感になだめてもらった。
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さらにこれは、千葉のときのこと。浦安のアパートに暮らしていたとき(こちらは家賃は8万円)、隣は新婚で、奥さんは外国の方だった。そして、旦那はいつも長期出張だ。隣近所とのやりとりはまったくない。出会わない。顔も見たことない。
 
やがて、かれらに子どもが生まれた。旦那は出張で帰ってこない。奥さんにしてみると、異国でのはじめての子育て、言葉が通じる友人がない。たいへんだったと思う。
 
あるとき、突然、ドスンと壁を蹴ってきた。ぼくも若かったので、そんなときは、ムカッとして蹴り返したりした。あとでわかったのだが、ぼくが窓を締める音が、隣家にかなり響いて、そのたびに壁を蹴っていたのだった。ぼくの出す音によって赤ちゃんが起きてしまい、お母さんは、そのたびにストレスが募っていたのかもしれない。
 
お母さんもついには、ノイローゼ状態。旦那が出張から帰ってくると、旦那は追い出されて、彼はクルマの中で寝泊まりしていた。あとでわかったのだが、二階の人の足音が少しでもうるさいと、竹の棒で天井をつついて、天井はボロボロだったという。二階の人は怖くて引っ越した。壁も蹴っ飛ばすので、ボロボロになっていたという。そんなことがあった。
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その当時のぼくは、独身だったし、子育てのリアリティは全くなかった。子育てというのは、どれだけお母さんに負担がかかり、ノイローゼになるくらい大変なんだということ。そのことが、わからなかった。しかも、隣家とのコミュニケーションは全くないので、さらにわからない。
 
その時のお母さんは、追い詰められて、苦しさにあえいでいたんだろう。怒りと悲鳴があったんだと思う。
 
やっと今頃になって、そんなことが共感できるようになった。それは自分で子どもを育ててみて、子育ての現実に直面して、はじめて分かることであった。
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今の日本の人口は、明治時代の4倍だ。急激に膨れたのだ。結果、急速に高齢化と少子化の道を歩んでいる。さらに、高度成長も終わって衰退期に入っている。
 
確実に押し寄せてくる脅威。それは、少子化だと思う。高齢化もそうだが。
 
北の脅威だの中国の侵略だの、ミサイルが飛んでくるということよりも、「差し迫ったリアルな脅威」と思う。
 
田舎を離れてみんな都会に行く。都会には仕事があるから。その都会では、子育てが難事になっている。家賃は高い。子育てにはお金がかかる。そして、非正規社員が多い。余裕がない。お母さんに負担がかかりすぎる。となれば、少子化の流れは勢いを増す。
 
国は、防衛費などに多額の予算をつかい、アメリカから高い武器を購入したり、海外にODAでばらまくよりも、子育てにお金をつかったほうがいい。お母さんが少しでもラクになるように、安心して子育てできる環境やソフト面での充実に。
 
いまの日本の最重要課題と思う。日本の未来は、子どもたちにかかっているのだから。
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