日々のエッセイ

ランとあかりとの散歩で

あかりを肩車して散歩。朝の光を浴びる。「あっちがいい、こっちがいい」。あかりの指差すほうに向かって歩く。川のほとりの道をゆっくり歩いて、太陽を礼拝した。

『禊ぎ祓いの祝詞』を唱える。「たかまのはらに かむづまります かむろぎかむろみの みこともちて……はらいどの おほかみたち」

そう唱えた時、 頭の上から、あかりがつぶやいた。「 ねえ、おとうちゃん。ランってオオカミみたいだね」。あかりは「おほかみ」(大神)を「オオカミ」と聞いたのだ。

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昨日の夜、あかりとランと散歩にでかけた。あかりに懐中電灯を持たせて、ぼくはランのリードを持つ。月の光があるとはいえ、森は真っ暗。懐中電灯を持ったあかりが走る。あわやランと鉢合わせになった。

ランがあかりに襲いかかったように見えた。もしや噛みついたのでは、と思った。猟犬なので、反射的な狩猟本能であったろう。驚いたあかりがひっくり返った。

ランを思いっきり蹴り上げた。靴を持ってひどく叩いた。ランは悲鳴をあげる。あかりは大声で泣きだす。

「痛いよ痛いよ」。あかりは泣き叫ぶ。あかりを抱き、ランのリードをもって大急ぎで家に帰る。あかりは、ひっくり返った時に口の中を少し切ったようだ。さいわい大した怪我ではない。噛まれたのでなく、威嚇されただけだった。

家に帰ってから、ふたたびランを思いきりお仕置きした。頭を蹴った。ランは悲鳴をあげる。 ランには気の毒だが、こうしないとシツケにならない。ひどく悲しそうにしょげて、犬小屋に縮こまっていた。朝、「ランや」と呼びかけたが、悲しそうにして、目をあわせない。

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あかりとランは。もはや一緒に散歩に行けないな。もしものことがあったら、取り返しがつかない。なにしろ、散歩中に草むらの中にいたイノシシのウリ坊に飛びかかって、半殺しにしたような猛者である。

田舎暮らしをして一年目に、飼い始めた甲斐犬である。最初の地位はナンバー2。いつも家の中の廊下に置いた小屋を住まいとしていた。それが結婚してあかりが生まれ、その地位は、ナンバー4に零落したのだった。もはや家に上がることは絶対に許されず、外の犬小屋で暮らすことになった。

ランにとって、あかりは自分の地位を奪った存在に見えるだろう。時々、あかりに向かって唸ることもあった。最近のあかりの成長で評価を高め、自分の身の程を知ったのだと思う。けれど、まだなめてかかるところもある。納得がいかないという風にも見える。

あかりの怪我(もうまったく大丈夫だが)とランをひどく打ったことによる、ランの心の痛みと両方を感じつつ散歩したのだった。

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