日々のエッセイ

山里での「なりわい」を開拓していく人たち

山里では仕事がない。畑を耕し田んぼをやれば、自給自足の道もある。空き家を借りればタダ同然。生活費はやすい。環境もいい。けれども、どうやって現金収入を稼ぐか。勤める会社がない。仕事がない。ひとがいないので、店をやってもお客は来ない。貯えがないと暮らしていけない。そういう心配がある。まあ、ひとり暮らしなら、なんとかなるかもしれないけど。家族がいたら、子どもがいたら、それはお金がかかる。

会社員として、きめられた時間に会社に行って、イヤな上司がいても我慢して、悪口言われても窓際になってもじっと耐えて、きめられた時間を会社で過ごす。でも、その対価として、ちゃんと給与が支払われる。そういう生き方もある。そういう生き方は、「安定」しているけど自由がない、創造性がない、ワクワクしないかな。

その生き方をやめて、「自由」であろうとすると、もう「安定」がない。先行き不安でどん詰まり感がでてくる。ああ、やっぱり会社員に戻ろうか、ということになる。

山里に暮らすとなると、会社員という選択は、もはやない。そもそも会社がないからね。あっても、やとってくれるわけじゃない。だから、自営業というか自由業の道。

そういうなかで、工夫して生計の道をちゃんとつくっている人たちもいる

独学でそば打ちを習って、山奥なのに年間2千人ものお客のある十割そば屋の一休の青木さん。川原の石に猫を描いて販売している晴れるや工房の渥美さん。塾を開き有機茶を栽培している新規就農の宇野さん夫婦。バブル期に建てられて不振になったハコモノの施設を買って、オートキャンプ場として来客ひっきりなしにした、川音の郷の畑中さん。街道のトンネルの前にブースを作って喫茶店を営み、出会いの場作りをしている大脇さん。廃材を活用して自前で家を改修、木工のアクセサリーを販売して子育てしている大友さん。

じつにさまざまな人たちがいる。ほんの一部。みんなぼくの友人たちだ。創意と工夫と努力とコミュニケーションのチカラ。みんなすごい。迫力がある。リアリティがある。

そういう人たちの話を聞くのは、とてもおもしろい。昨年はそんな人たちに語ってもらうトークイベント「こんなにアートフルな北遠山里暮らし」を、まちなかで開催した。来年は、さらに山里での「なりわい」を開拓していった人たち、あるいは、いま奮闘中の人たちのトークイベントを、まちなかやって展開していきたい。あるいは、新聞をつくって発信していこと思う。

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