日々のエッセイ

ひとり暮らしのお年寄りを訪ねる

ひとり暮らしのお年寄りを訪ねる。とくに用事はないんだけれども、どうしているのかなあと、たまに立ち寄らせてもらう。ときにあかりを連れていく。
ひとりは83歳のおばさま。昨年、ひとり娘を亡くした。90歳の夫は階段から落ちてケガをして、いま施設に入っている。耳が遠いので話もできない。なにもすることがなく、一日ぼーっとしているだけ。このままではボケてしまう。
 
おばさま本人も転倒して足をケガをして、まだ治らない。親戚も近くにいない。「晩年になって、まさかこんなに不幸が続くとは思わなかった」と言う。けれども、愚癡も不満もこぼさずに、じっと耐えている。
「よくないことがもう出尽くしたので、あとは良いことしか起きないんじゃないのかなあ」と言うと、「過去世からずっと背負ったきたものがあるから、自分が選んできた道とおもって歩むしかなのかねえ」と。
 
そんなやりとりだった。まあこうして、話し相手になるだけでも、気が紛れるかなあと思ってもみたり。「これをあかりちゃんに」と、大きな二十世紀梨をいただいた。
それから、90歳のおじさまを訪ねる。いつも畑にいる。この方の畑は手入れが行き届いていて、美しい。「ネギを持っていくかぁ」と、山ほどいただいた。ナスも、オクラもたくさん。
97歳になる妻は、施設にいて点滴の日々だという。もう血管が細くなって点滴を打てない、あと数日かなあという。
自前の歯が26本もある。小学校一年のときから日記を欠かしたことはない。軍隊に行っても、トイレに入って書いていた。なんでも記録してあるんだという。セックスの回数まで。こないだ数えたら、1万回を超えていたよ、と笑う。鉄人だ。
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