日々のエッセイ

年とると田舎暮らしもたいへん

ここからクルマで40分のはるか山奥。駅から片道2時間余。店もなんにもない山奥。そこでひとり暮らししている友人を訪ねた。
かれは畑を耕し川の流れをながめては酒を飲む。ほとんど出かけない。もとより漢文学を学び書物に囲まれ、仙人みたいな人だから、風情があってなかなか絵になる。
60歳とまだまだ若いほうだ。だがこの数年、どうも体調が悪そうだ。訪ねるたびに弱っていくように思う。ずいぶんと痩せてきた。こないだ飲みすぎて倒れて右の肋骨が痛い。その前はまた倒れて左の肋骨が痛む。膝がガクガクしてきた。そんなことを言う。しっかりやっていた畑も、もうできなくなったと草ぼうぼう。
「酒をやめたらいい。ちゃんと食べないとだめだよ」。そうと言うと「いや、酒を断つくらいなら、生きている意味がない」。「嫁さんがいたら、いいのにねぇ」と言うと、「たしかにそうだけど。このひとり暮らしの気楽さ、自由さがなくなると思うと、それがつらい」と。
山里で仕事もしないで悠々と生きていると、やはり不摂生になりがち。若くて元気なうちは、山里暮らしはいいんだれども、やはり歳をとってくるとどこか体調は悪くなってくる。医者まで通うとなると、遠くてひとりじゃたいへん。
隣家のおばあさんも90を過ぎて、施設に入って、いまは空き家。まわりに家もない。もしも、倒れたとき誰も気が付かないとそのまままになってしまう。そうして、だれが世話するのかというと、なかなかたいへんだ。
玄関先に緊急連絡先が貼ってある。兄がいるんだけど、こないた脳出血で倒れましてね……と。いつもは玄関開けているんですよ。「いのちの窓」と呼んでまして、ここがあいていればぼくが生きている。夜はあかりが灯っていれば生きていると。
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