日々のエッセイ
10.122017
農地付きの宅地と建物を買いたいという相談を受けた
農地付きの宅地と建物を買いたいという相談を受けた。広大な農地がついているという。農業をしなくても、農地は二束三文だし、活用の道はいろいろある。買っておいたほうがいい。
しかし、農地の取得はいろいろ厄介だよと伝えた。
農地というのは、「農地法」で売買が制限されている。まず、「農家」でないと農地は取得できない。「農家資格」をとらなくちゃいけない。
じゃあ普通の人が農家資格をとれるかというと、それは可能。しかし、時間はかかる。ぼくの場合は一年かかった。
農業委員会に事業計画書を出して面談し、委員が実際に見に来た。一年後に耕作状況を見にきて、それでオッケー。やっと農家資格を得た。それから、申請書類を提出して登記をすることになった。
ややこしいのは、土地の所有者が複数いたりすることだ。その一人ひとりに委任状、印鑑証明やらをお願いする。あちこちにハンコを押してもらう。そのために出向いたり、来てもらう。相手がお年寄りだと、たいへんだ。
さらに、土地はいつくかの筆にわかれている。すると、一つひとつ登記するわけで、これが手間。ぼくの場合、16筆あった。なかには農地なのに杉の大木が生えていたりすると、農業委員から地目の変更をしろと言われて、その手続もあった。
農家資格を得るために数年もかかれば、その間に、地主が死亡して相続が発生して、また振り出しになることもある。
謄本を見たら、すでに地主は死亡していたという場合もある。最近の相談を受けた事例では、売りたいという人と土地の名義人がちがっていた。そりは父親の名義で、すでに亡くなっていた。亡くなった父親がまた、農地を仮登記していたのだが、その農地の名義人も死亡していた。
このように、山里の場合、相続登記しないでそのまままというケースがよくあるのだ。
土地を取得するためには、まず相続登記をしてもらわなくちゃいけない。そのためには、複数の相続人の印鑑、戸籍謄本、遺産分割協議書の作成などが必要。そういうことをして、相続の登記、そのうえでの土地の売買となる。
ま、その他、いろいろ注意点はある。山里は水が不足しているところがある。沢の水をあつめて水を補給している集落の場合、水の絶対量が不足している。よそ者が来られたら、自分のところの水が来なくなるので、水を渡さないということがある。
ある集落の自治会長に電話したら、水が不足するから移住者は来てもらったら困る、と言われたこともあった。
知人は、一年余も200リッターのタンクを積んで、湧き水を遠くまで汲みに行っていた。ある集落では、水の権利を30万円とか50万円を支払った。
……ということで、過疎化の山里に定住しようとするためには、いろいろ複雑なことがある。空き家があるからすんなり移住というわけにはいかない。また、地元の集落との付き合いのこともある。また別の機会に紹介させてもらう。
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