日々のエッセイ

救急搬送されたMさんを、となりまちの森町総合病院に訪ねる

救急搬送されたMさんを、となりまちの森町総合病院に訪ねる。カーテンで仕切られた4人部屋にいた。寝たきりだ。

なんと、腰椎骨折だという。とくに外傷はないのだから、おそらく圧迫骨折だろう。骨がスカスカで潰れたという感じだと思う。

酒ばかり飲んで栄養を摂らないので、骨の成分が弱くなっている。ま、内臓系でなくてよかった。栄養をつけてリハビリしていけば、大丈夫と思う。まだ60歳なんだから。

酒もタバコも飲まないのは40年ぶり。病院食の一食が、これまでの食事の3倍分といっていた。これまでほとんど栄養を摂っていなかったわけだ。ま、この機械に、酒を断つことになればよし。

しかしまったく動けないのはつらそう。「体も捻れませんし、寝返りもだめです。テレビも体がひねるので見られません」とMさん。「まるで、正岡子規の仰臥漫録の世界だね」と言うと、「子規には季節の花がありましたが、ここはなんにもありません。天井を見ているだけです」。

晩年の子規は脊椎カリエスを患って、晩年はほとんど寝たきりであった。根岸の家にいて、仰臥しながら、庭に咲く季節の花を歌や俳句にしていた。しかし、多くの弟子たちが子規のもとを訪ねた。高浜虚子、河東碧梧桐、伊藤左千夫、長塚節など。そんなことを語りあったのだった。

いまのかれは、持っていった荘子の3冊だけじゃ、もたない。「ペンとノートがあれば、漢詩が書けるですけど……」と言うので、看護師さんからボールペンと大量のメモ用紙をもらってきた。

まあ、コルセットで固定して安静にしていればそのうち治ると思うが、退院して山奥の家の暮らしは大変になりそう。

「春になったら、ぜひ漢文と漢詩の講座をやりましょう」と言ってくれた。子規のように、寝ながらでも、漢詩のはなしをしてもらいたいものだ。

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