日々のエッセイ

行政と市民が協働する道について

◉バラマキから選択と集中へ
日本の人口は減少の一途をたどり、経済は停滞している。ありあまる予算はない。高度経済成長期のように、バラマキする時代ではない。そこで「選択と集中」だ。──そんなことばがよく聞かれる。
若者の雇用を生み出すこと、〈まちなか〉のにぎわい創生計画など、集中的な施策を投じる必要がある。区の再編や、旧市町が独自にすすめていた施策の見直しと合理化も必要であろう。
◉選択と集中されないエリアはどうなる
ただ懸念もある。「選択・集中されないエリア」だ。わたしが暮らす春野町などの中山間地は、その部類に入ると思う。こうした地域は、どうなるか。
「そんな不便なところにいないで、便利で安心な〈まちなか〉においでなさい」と、まちなかに、畳み込まれるしかないのだろうか。しかし、永く住み慣れた土地だ。先祖が耕作してきた田畑や山林を捨てられるはずがない。
不便な田舎に住み続けたとしても、どんどんと過疎高齢化はすすむ。病院、買い物、教育、老朽インフラなど、次第に生活の困難は増していく。学校は、廃校に追い込まれ、子育て世代は住めなくなる。子どもがいなくなり、集落はやがて消滅してしまう。そのことは、食料をつなぐ田畑、いのちのつなぐ水源となる森も荒廃し、自然災害も頻発することにつながる。このことは、田舎の問題だけではない。〈まちなか〉の市民の安全にもかかわることなのだ。

◉田園回帰の若者たちをよびこむ
じつは、中山間地は魅力的なのである。その暮らしは、人間らしい生き方の提案にもなる。低炭素、循環型経済、省エネルギーの社会──それを可能にする土壌がある。
いっぽうで、若い世代の田園回帰現象が起きつつある。「田舎に暮らして農業や林業をやってみたい」という若者たちが増えてきている。
ここに、中山間地をまもるひとつの可能性がある。たとえば、放置空き家と田舎暮らし希望者をむすびつけていけば、集落消滅にもストップをかける可能性もある。
地域の見守り支援、地域の安心にもつながる。山里に活気が生まれる。また、定住こそのぞましいが、交流人口が増えることもたいせつだ。〈まちなか〉の市民がときどき訪れる「いきつけの田舎」になっていってもよい。

◉じっくりと育てていく行政と市民が協働する道 
これらの定住促と交流促進・魅力発信事業を行政だけが担うとなると、一方的な施策になりがちだ。地域を知悉している民間の力が必要だ。「移住者と地元の気持ちがわかる」人による定住促進は、確実に効果がある。
そのためには、受け皿となる諸団体の質的向上は必須だ。人、モノ、カネの手当も必要だ。じっくりと「育てていく」ありようもたいせつだ。マネージできる人と仕組み、各団体ごとの横の連携とサポートしあえる仕組みを育てていくことだ。
こうした団体と市民をつなげていく。たとえば、定年退職し、時間的・経済的にも余裕があり、ありあまる能力を社会に貢献したい人たちがいる。そのような人たちをむすびつけていく。こうした分野で、行政と市民が協働する道がある。

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